愛くるしい動きに加え、水槽内の水草やガラスに生えるコケ、エサの食べ残しを食べてくれるエビはアクアリウムの世界で人気が高く、愛されてきました。
最近では、エビの品種改良が進み錦鯉のような絵柄のレッドビーシュリンプなど、見た目にも美しいエビがいろいろと現れ、エビ専用の水槽をつくる愛好家も多くいます。
そんな可愛いエビたちは観賞魚よりもさらにデリケートです。
エビの主な死因
- 水槽内の水質悪化
- 水温(高温に弱い)
- pHの急激な変化
- 水草に残った農薬
- 薬品の使用(殺虫剤など)
- 酸欠
- ストレス
…など。
このように、化学物質や水の状況に敏感に反応してしまうエビですが、飼育に腐植物質(フミン酸やフルボ酸)が応用できるのをご存じですか。
腐植物質とは、森の中で落ち葉や枝、倒木などが微生物によってこれ以上分解できないところまで分解されつくした状態の有機物を指し、酸やアルカリに対する反応で3つに分類されます。
これら3つの中でも
特にフミン酸とフルボ酸に焦点をあててみると、
自然界では水に溶け出て、土壌に加え河川、湖沼、海といった水系に棲む生物に多くの生理活性を与えながら豊かな生態系の礎を築いてきました。
フミン酸・フルボ酸の研究は古く、医療、農業、畜産にはじまり、
健康や美容の分野でも大きな広がりを見せています。
近年では魚やエビ、海藻の養殖だけではなく、アクアリウムへの応用も進んでいますので、
観賞用のエビの飼育について、効果や注意する点などをご紹介します。
フミン酸・フルボ酸を活用する(作用/効果)
ここでは、エビを育てるプロたちのエビ養殖の現場の話をベースにしながら、世界で論文発表されたエビ生産におけるフミン酸・フルボ酸の作用と活用法などを参考にお伝えします。
pH緩衝能力が生存率を改善する
エビは水質にとてもデリケートに反応します。
淡水のエビが生存できるpHは一般に6.0~7.5の弱酸性から中性域とされています。
しかし、中性域(pH7~8)の川に棲む淡水エビのpHによる影響を調べた下記の論文では、酸性に調整(pH3.5、4、4.5、5)した人工的に作った軟水と硬水、天然の硬水(エビの生息域)に腐植物質を添加すると、pH4~4.5で生存率が高まったとしています。
一方、添加していない水槽では、pH4.5以下はほぼ全滅しています。
淡水エビに対する低pHの影響(毒性)は、人工硬水で顕著でしたが、腐植物質による生存率改善の結果を見ると、フミン酸・フルボ酸が持つpH緩衝能力が大きく働いていると考えられます。
なお、軟水と硬水における違いは、含有するカルシウムイオンとナトリウムイオンが関係している可能性を論文では示唆しています。
この試験は急性毒性試験でしたが、
自然の中を見ても、天然の酸性河川であるブラジルのネグロ川(pH3近い強酸性でブラックウォーターと呼ばれる)では、多くの水生生物たちが元気に生活をしています。
この状況を多くの研究者たちも注目し、研究をした結果、
おそらく大量に溶存している有機炭素(特にフミン酸やフルボ酸)の存在がpHの低下で引き起こされるイオン調節障害を防いでいるのではないかと考えられています。
つまり、天然のフミン酸・フルボ酸は、エビや魚などが生存しにくいほどの強い酸性下であっても、生体が対応できるように働いてくれるということです。
なお、天然に存在するフミン酸とフルボ酸は、硫酸や塩酸をはじめとする無機酸とは異なり、有機酸に分類されます。
「酸」とついてはいますが、水槽に入れたとしてもpHは酸性に傾きません。
このため、もしも酸性に傾くようであれば、精製時に使った硫酸や硝酸、塩酸などが残っているか、硫化やニトロ化したフルボ酸の可能性が高くなりますので、化学物質に敏感なエビたちに使用する場合には注意が必要です。
「生存率|成長|飼料利用率|抗酸化能力|ストレス耐性」をUPする
フミン酸・フルボ酸を飼料や肥料に添加することにより、豚、牛、鶏などの経済動物や農作物の成長が促進されるという論文は多数発表されています。
また、免疫力が向上してストレス耐性が上がり、生存率が上がったという発表もあります。
下記の論文では、「亜炭由来のフルボ酸をバナメイエビ(シロエビ)の飼料に添加した結果、稚エビの生存率、成長、飼料の利用率、抗酸化能力、ストレス耐性を向上させることができると明らかになった」と報告しています。
HSP70(Heat shock protein 70)とは、熱ショックタンパク質と呼ばれ、熱や放射性物質、有害な重金属などの化学物質、低酸素といった生体に対する様々なストレスによって発現が増加します。
このため、ストレスタンパク質と言われ、ストレスによって傷付いた細胞の修復や保護をする働きを持つ、防御システムのひとつです。
つまり、HSP70の量が増えているということは、それだけストレスにさらされている状態にあると言えるのですが、論文によると「フルボ酸の摂取により、エビの臓器内にある活性酸素を除去する抗酸化作用が働き、HSP70の血球中濃度が低下した」と報告しています。
このことは、エビたちのストレス耐性が向上したことを意味しています。
栄養の吸収効率がアップする
エビは主に、水槽内に生えた苔、観賞魚との混泳の場合は食べ残したエサやフン、時には水草の新芽をエサとして食べています。
他にエサを与えなくても餓死することは滅多にありませんが、繁殖させたい時には活用するとより効果的です。
栄養の吸収を促進する力のあるフミン酸・フルボ酸を水槽に添加すると、少ないエサでも効率が良くなるので、与え過ぎ防止にもなります。
なお、エビがリラックスしたり、稚エビの隠れ家にもなったり、酸素の供給源にもある水草は、エビの飼育には欠かせないアイテムです。
フミン酸・フルボ酸はこうした水草の生長促進にも効果を発揮します。
ただし、デリケートなエビは水草に残留する農薬にとても弱いので、「農薬不使用」が保証された水草を選ぶようにしてください。
水質の悪化を防ぐ
水槽の水質が悪化する一番の原因は、排泄物やエサの食べ残し、枯れた水草などに含まれるタンパク質を、嫌気的な(酸素がない)条件下でバクテリアが栄養源として利用した結果発生する、有毒なアンモニアや亜硝酸です。
こうした有害物質を比較的無害な硝酸へと変換させる硝化サイクル(硝化菌による生物ろ過)には酸素が必要なため、エアレーションを使い酸欠を防ぎましょう。
エビは基本的に底面で生活しますので、底面式のフィルターや底砂としてソイルを利用すると水質が安定しますし、水草が根を張りやすくなります。
なお、フミン酸・フルボ酸を添加すると硝酸菌の活動をより活性化させてくれるだけではなく、最適なpHの維持にも役立ちます。
フミン酸・フルボ酸添加の注意点として、無機酸残留の有無があげられます。
抽出の際に使用する塩酸や硫酸といった強酸性の無機酸が残っていると、水が急激に酸性へと傾きます。
こうした状況では、pHの変化に敏感なエビが死んでしまうばかりではなく、硝酸菌にも悪い影響を与えますので、きちんと中和処理が施され、安全な状態の商品を選ぶようにしましょう。
なお、エビたちが元気そうに動き回っているときは、苦しんでいるサインです。
水質の悪化や水温が適正ではない可能性がありますので、亜硝酸やpHのチェックを定期的に行い、問題がある場合はフィルターやソイルの掃除をしたり、必要に応じて交換をしましょう。
稚エビの生存率を向上させる
幼生の形で生まれ、淡水の水槽内では育たないヤマトヌマエビを除き、親と同じ形で孵化する淡水エビは、繁殖させることが可能です。
特にデリケートな稚エビは、水温や水質といった環境の変化が大きなストレスとなります。
環境を良好な状態に整えることはもちろんですが、フミン酸・フルボ酸を添加すると、稚エビのストレス耐性を上げるとともに、栄養の吸収を促進させ、結果として生存率まで向上させます。
さらに、エビの飼育に欠かせない水草の生長促進や、稚エビのエサとなるプランクトンを増やしてくれるので、プランクトンを発生させるエサとの相性も抜群です。
適量はpHの変化を見ながら
水槽の水をサプリメント化させるフミン酸・フルボ酸ですが、はたしてどの位添加したらよいのでしょうか。
森の中で自然に作られる天然のフミン酸やフルボ酸が河川や湖沼に大量に流れ出したとしても、周辺の生物に悪影響を及ぼすことはありません。
しかし、市販されている商品の多くが化学物質を使ってフミン酸・フルボ酸を抽出、精製しています。
こうした中には化学反応によって天然とは異なる性質となっているものもあり、水槽内のpHを急激に変化させてしまう可能性があるのです。
化学物質を使っているものは基本、天然とは違うことを念頭に置き、pHに気を付けてごく微量から試すようにしましょう。
なお、化学物質抽出をしていないフミン酸・フルボ酸もあります。
後ほどご案内しますが、こちらは自然界にある天然の状態により近いため、間違って水槽に多く入れてしまったとしても、pHの急激な変動は起きないので安心です。
ピートモスや市販の腐植酸を入れすぎるとpHが酸性に傾いてしまう
自然界では、森の中でフミン酸やフルボ酸が作られ、周辺の水系を介しながら植物をはじめとする多く生物に恵を与えています。
これに対し、人工的な空間である水槽ではフミン酸・フルボ酸を得ることができないため、後から添加しなくてはなりません。
フミン酸・フルボ酸が配合された商品はいくつもありますが、原料や抽出・精製方法などによって機能だけではなく、安全性にも違いが生じることがあります。
デリケートなエビたちが元気に育つよう十分に配慮し、人が使用しても大丈夫なレベルのものを選択してあげたいですね。
フミン酸・フルボ酸の原料となるのは主に、亜炭、泥炭(草炭、ピート)、完熟発酵させた樹木の3つがあり、抽出・精製方法も異なっています。
水槽内にフミン酸・フルボ酸を添加する際の注意点に、無機酸残留の有無をあげましたが、古代の植物の堆積が鉱物化した亜炭、湿地帯に生えるヨシやミズゴケなどが堆積して炭化した泥炭は、抽出にいずれも強い酸性を示す無機酸を使い溶出させなくてはなりません。
その後、中和の工程を経るのですが、無機酸が残留してしまうことがあります。
万が一、この無機酸を添加すると、水質が酸性に傾きすぎてしまう可能性があるので、市販品を入れる時は特に注意しましょう。
なお、バクテリアのろ過機能が不十分なセットアップの初期段階や、水草用の肥料、レイアウト用の石などを入れると、水がアルカリ性に傾いてしまうことがあります。
この対策の1つとして用いられるのがピートモスです。
ピートモスは泥炭を乾燥し細かくしたもので、フミン酸とフルボ酸の含有量は多いのですが、難分解性の繊維質に絡まり、水にはあまり溶け出すことができません。
よって、フミン酸・フルボ酸自体の効果を期待するのは難しいかも知れません。
ピートモスはアクアリム用より安価な園芸用もありますが、pH調整として石灰が含まれていない無添加のものを必ず選んでください。
また、投入の際はpHが急激に下がりすぎてしまうことがあるので、量にも注意が必要です。
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ピートモスの問題点
アルカリ側に傾いた水槽に入れるピートモスには、フミン酸・フルボ酸の他にも有機酸が含まれているため、pH調節だけではなく何らかの効果をもたらす可能性はあります。
しかし、気になる点もありますので、ここではピートモスのデメリットについてあげてみます。
フミン酸・フルボ酸の効果は期待薄
ピートモスにはフミン酸やフルボ酸が多く含まれています。
ピートモスは湿地のヨシやミズゴケの堆積物が炭化したものですが、その過程において分解されなかった難消化性の繊維質の中にフミン酸・フルボ酸が絡まった形で存在しているのです。
これらを取り出すには化学物質を使って繊維を溶かすしかなく、水の中に入れただけでは僅かしか溶出しません。
よって、ピートモス自体を水槽に入れても、フミン酸・フルボ酸の効果はあまり期待できないのです。
フィルターの目詰まり問題
ピートモスはふわふわとした繊維がそのままの状態で販売されています。
アクアリウム用はこの繊維が長めになっているため、水槽に直接入れても比較的ゴミが出にくく安心なのですが、問題なのは園芸用です。
アクアリウム用に比べるとかなり格安で利用しやすいと思われるかも知れません。
しかし、土に混ぜ込みやすくするために繊維が細かく裁断されていて、このまま水に入れてしまうと粉末が全体に広がってゴミが浮きやすく、フィルターが目詰まりしてしまうという問題が生じます。
このため、不織布のパックになどに入れる必要があるので注意しましょう。
なお、園芸用を利用する場合には、必ずpH無調整のものを選んでください。
pH調整済は石灰など、ピートモス以外の成分が含まれ、エビの生体に大きなダメージを与える可能性があります。
pHが下がりすぎる問題
ピートモスを水槽に投入すると、pHが下がりすぎてしまうことがあります。
適量がどの位なのかは、使用するピートモスによっても異なりますので一概には言えません。
そこで、いきなり入れるのではなく、あらかじめピートモスで換水を作っておき、様子を見ながら水槽に入れる方法もありますが、気温が低い時期では水温の急激な変化にも注意しなければならず、面倒な手間がかかります。
pH調節は安全なフミン酸・フルボ酸で
優れたpH緩衝作用を持つフミン酸・フルボ酸の原料の1つに、樹木を完熟発酵(分解)させたものがあります。
フミン酸やフルボ酸はもともと植物の最終分解物であるため、完熟した樹木は、森の中で自然に作られるフミン酸・フルボ酸に最も近いのです。
また、亜炭や泥炭のように鉱物化、炭化せず、土の中から掘り出す必要はないので、有害な重金属や放射性物質などの不純物が含有する心配もありません。
この完熟発酵樹木を使い、水だけでフミン酸とフルボ酸を抽出したのが、フミン酸・フルボ酸水溶液『HS-2Ⓡ AQ(エーキュー)』です。
水だけで抽出すると、化学物質抽出で使用する無機酸が影響して沈殿してしまうフミン酸を水溶化した状態で利用することができますし、化学反応によって性質が変化することもありません。
自然界に存在するフミン酸・フルボ酸は水系を介して生物たちの命に多くの恵みを与えています。
可愛くデリケートなエビたちに使うウォーターサプリは、より自然に近く安全、そして安心なものを。これがフミン酸・フルボ酸水溶液『HS-2Ⓡ AQ』をおすすめする理由です。
まとめ
エビはpHをはじめ水温、水草に付着する農薬の有無など、観賞魚に比べると心配なことが多いかも知れません。
それでも、かわいくて癒しをくれるエビを育てたい、できれば繁殖もさせてみたい。それならばウォーターサプリサプリとしてフミン酸・フルボ酸を活用してみてください。
フミン酸・フルボ酸を選ぶポイントは安全性です。
どんな原料から抽出・精製しているのか、残留する有害な重金属や放射性物質、化学物質はないのか、化学反応によって異なる性質になっていないかなど、よく確認することが大切です。
より自然の状態に近いフミン酸・フルボ酸を選んで、エビを元気に育てましょう。